高次脳機能障害の後遺障害等級

自賠責保険の等級認定の重要性

自賠責保険の後遺障害等級認定と、裁判所における後遺障害等級認定とは異なる手続きとなります。
しかし、裁判所は、自賠責保険で認定された後遺障害等級をもとに損害額を算定する(少なくとも参考にする)傾向にあります。

そのため、自賠責保険の被害者請求において、高次脳機能障害等の適正な後遺障害等級の認定を得るためには、専門的知識を備えた弁護士の指導のもと準備することが重要です。
また、すでに自賠責保険の事前認定や被害者請求において、後遺障害等級が認定されている場合には、等級認定が適正であるかどうかについて、専門的知識を備えた弁護士に相談の上、必要であれば異議申立ての手続をする必要があります。

自賠責における高次脳機能障害の等級判断基準

自賠責保険における高次脳機能障害の後遺障害等級判断基準は、大きく分けて4つあります

①頭部に外傷を負っているか
事故によって頭部に外傷を負っているかどうか。

②意識障害があるか
頭部外傷後に「半昏睡ないし昏睡で開眼・応答しない状態が少なくとも6時間以上」もしくは「軽度意識障害が少なくとも1週間以上」あったか。

③画像所見があるか
初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも、3ヶ月以内に脳室拡大・脳萎縮が確認できるか。なお、最近は画像所見が得られない、軽度脳損傷(MTBI)が問題となっており、MTBIについては裁判で争う方法が最も有効であると言われています。

④症状に応じた個別のテストの結果はどう出るか
例えば失語であれば失語症の検査、注意障害であれば注意障害の内容に応じた個別の検査を受け、高次脳機能障害特有の症状を立証することができるか、また、必要なテストをすべて受けているか(なお、感情コントロールなどの情動の障害については、普段身近に接しているご家族の方が体験したエピソードが頼りとなりますので、何かあったらメモを取ることが極めて重要な作業となります)。

高次脳機能障害の後遺障害等級の概要

神経系統の機能または精神の障害
第1級 1号 「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの
身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生命維持に必要な身のまわり動作に全面的介護を要するもの
第2級 1号 「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの
著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの
第3級 3号 「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの
自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの
第5級 2号 「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの
単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため、一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができないもの
第7級 4号 「神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの
一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
第9級 10号 「神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの
第12級 13号 「局部に頑固な神経症状を残すもの」
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの
意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力および社会行動能力の4つのうち、いずれか1つ以上の能力が多少失われているもの
第14級 9号 「局部に神経症状を残すもの」
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため軽微な障害を残すもの
MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的ににみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるもの

なお、等級が一つ変わるだけで受け取れる金額が非常に大きく変わります。具体的な金額等の例については次の《「等級」と「基準」による受取金額の差》のページでご紹介いたします。

介護の必要性の有無

高次脳機能障害のような、重度の後遺障害を負ってしまった被害者には、ご家族などによる介護が必要となる場合があります。その場合、「常時介護」と「随時介護」のどちらが必要かを判断する必要がありますが、常時介護と随時介護との違いは、程度問題で明確に区別することはできません。

したがって、上記の認定資料をもとに総合的に判断して、常時介護か随時介護で足りるのかを判断していくことになります。そのため、「日常生活状況報告書」の質問に形式的にチェックをするのみでなく、「陳述書」を添付して、被害者ご本人の日常生活状況をより具体的かつ詳細に主張することが必要となります。

当事務所では、被害者のご家族から被害者ご本人の日常生活状況と、それを支えるご家族の困難について、詳細に聴き取りを行ったうえで陳述書を作成し、適正な自賠責等級の獲得を目指します。なお、自賠責保険上では、1級と2級にしか介護が認められないことになっていますが、裁判では、後述のとおり3級や5級でも介護料が認定された判例がありますので、問題となっているエピソードや、介護や見守りが必要な事実を、きめ細かくピックアップしていく必要があります。

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